組織を「身体」として捉える新発想:企業リハビリが変える組織開発の未来

現代の企業組織が抱える課題は複雑化の一途をたどっています。コミュニケーション不全、生産性の低下、社員のモチベーション問題...。これらの課題に対して、医療のリハビリテーションの考え方を応用した革新的なアプローチ「企業リハビリ」を出版しました。
企業リハビリとは何か?
企業リハビリとは、医療現場で培われたリハビリテーションの専門知識を組織開発に応用した全く新しいアプローチです。
理学療法士として15年間の経験を持つ私(木村)が提唱するこの手法は、組織を一つの「身体」として捉え、その機能回復を目指すという画期的な発想に基づいています。
組織を身体として見る「身体性」の視点
企業リハビリでは、組織の各要素を人間の身体の部位になぞらえて分析します
- 脳:理念、経営戦略、ビジョン
- 骨格筋:組織構造、権限系統、役割分担
- 神経系:情報の流れ、コミュニケーション経路
- 循環系:資金、リソース、モノの流れ
- 体幹(コア):中核人材、コア業務、隠れた強み
- 手足:各種プロジェクト、事業

この視点により、組織の問題がどこで発生し、どのように他の部分に影響を与えているかが明確に見えてきます。
組織の機能不全を生む「3つのズレ」
企業リハビリでは、組織の機能不全の原因を以下の3つの「ズレ」として分類します:
1. 構造のズレ
組織構造や業務プロセスなど、目に見える「形」のズレ。役割分担の曖昧さや権限系統の混乱などがこれに該当します。
2. 感覚のズレ
組織文化や社員のモチベーションなど、目に見えない「感覚」のズレ。価値観の相違や帰属意識の低下などが含まれます。
3. 未来像のズレ
あるべき姿と現状とのギャップ。理想と現実の乖離が組織の方向性を見失わせる原因となります。
フューチャーマッピングとの融合による実践手法
企業リハビリの実践においては、フューチャーマッピングという手法が重要な役割を果たします。これは理想の未来を先に描き、そこから逆算して現実的な行動計画を立てるアプローチです。
フューチャーマッピングの3つの革新的機能
① 制約からの解放 従来の経営計画の延長線上ではない、全く新しい視点やビジョンを生み出します。
② 埋もれた価値の発見
組織内に眠っているが忘れられている強みやリソースを再発見する力を持ちます。
③ 理想と現実の橋渡し 高い目標を掲げつつも、それを達成するための現実的なプロセスを設計できます。
実践への示唆:なぜ今「企業リハビリ」なのか
現在の日本の多くの企業は、すでに「機能不全」に陥っており、リハビリが必要な状態にあると言えるでしょう。しかし重要なのは、外部のコンサルタントに依存するのではなく、まずは自分たちの頭で考えるプロセスです。
企業リハビリとフューチャーマッピングを組み合わせることで、組織は以下のような変化を期待できます:
- 固定観念や既存の枠組みを超えたアイデアの創出
- 集合的な意識の形成と共通言語の構築
- 理想と現実を繋ぐ実行可能な計画の策定
- 組織全体の自律的な機能回復
組織開発の新たな可能性
企業リハビリという発想は、組織開発に医療の専門知識という新たな視点をもたらします。これまで「できないこと」に注目しがちだった組織分析から、健康状態、心身機能、活動、参加、環境因子など、多角的な視点で全体を捉える包括的なアプローチへの転換を可能にします。
社内にいると気づきにくい「機能不全」を可視化し、組織の真の回復を目指す。そんな企業リハビリの考え方が、これからの組織開発に新たな可能性をもたらすかもしれません。